フレンチ料理には仏蘭西ワインが、イタリア料理には伊太利亜ワインが合う、と私ははるかむかしに教わりました。
確かにフランスやイタリアは単なる憧れで、輸入されるワインが限られていた1980年代中頃は、ワイン自体が貴重な存在でした。なにせボジョレヌーボー(濃いウマの対極)がニュースになる程でしたから。
当時のいい文化は、昼夜問わずフレンチやイタリアンを背伸びして食べる「見栄」でした。お店は作法や外食の魅力、スタイルを楽しく学べる教会のようなものでした。
今はこうしたミサに通う事なく、「ワイン」だけはいつでも手っ取り早くテイスティングできます。でも、糊がきいた白布のかかったテーブルに座る緊張感や、キッチンから漏れる料理人達の喧騒をBGM代わりにすることもなく、ただシンプルにワインのおいしさを語れるのは、ある意味幸せなことです。
背をピンと伸ばして心も正せば、仮にバケットだけを味わっても、合わせたワインの美味しさは変わります。おウチでも然り。値付けの違いではありません。
自分の手からこぼれない程度の幸せな「おウチゴハン」と、ワンコインワイン。
ワインの味以上に、家庭のおかずの味付けとの「相性」についても、ずっと探し続ける旅、のような気もしてきた今日この頃です。